複数校連携で教育効果 「地域の核失いたくない」
新教育の森:小規模校の再生 複数校連携で教育効果 「地域の核失いたくない」
◇4校で合同授業、統廃合は選ばず--岩手・宮古
少子化や過疎化で小中学校の統廃合が全国的に進む中、児童の少ない小規模校が統廃合の道を選ばず、教育効果を上げようと工夫を凝らしている。岩手県宮古市の山あいにある四つの小学校は週1回、合同授業を行って「競争意識が弱い」「集団性が身に着かない」などの「弱点」を克服しようとしている。子どもたちが共に学ぶ合同授業をのぞいてみた。【佐藤敬一】
小学5、6年生31人が大きな輪になって、市陸上協会の講師の指導で準備運動をしている。9月初旬、宮古市立蟇目(ひきめ)小での体育の授業。どこの学校でも見られる授業風景だが、このうち蟇目小の児童は十数人。半数以上は周辺の他の3校から参加した児童たちだ。
3校の児童は、市が委託しているバスやタクシーに乗って蟇目小にやって来る。5、6時間目に行われたこの日の合同授業は、目前に控えた市陸上競技会へ向けた練習。普段よりも人数が多いため、走り高跳びや幅跳び、ボール投げなどといくつかのグループに分かれて授業ができる。
四つの小学校の児童が集まることから「四つ葉の学校」と名付けられた合同授業は、文部科学省の「新教育システム開発プログラム」に採択され、昨年度から始まった。05年6月に合併して宮古市となった旧新里村地区にある▽茂市(児童数48人)▽蟇目(同50人)▽刈屋(同44人)▽和井内(同14人)の4校の4~6年生が週1回、いずれかの学校に集まって授業を受ける。国語、社会、体育、音楽の4教科に今年からは算数が加わった。
蟇目小から約19キロ離れ、車でも30分かかる和井内小の古舘光洋君は同小でただ一人の6年生。それだけに合同授業について、「いつもは5年生も合わせて3人しかいない。合同だと体育でチーム戦もできるし、他の学校の同じ学年の友達と一緒にやれるので人数が多いほうが楽しい」と話す。
学校の小規模化が進むと、統廃合が検討されることが多いが、中屋定基教育長は「どの小学校も130年の歴史を持ち、地域コミュニティーの核となっている。教育長としてこれまで六つの学校の統廃合を進めてきたが、学校統合で地域の活性が失われていく姿を見て大きなジレンマを感じていた」と話す。そのうえで「子どもの人間関係が固定化し、切磋琢磨(せっさたくま)しないなど小規模校の弱さはあるが、それならば1週間に1回程度、一緒に学習すれば教育成果が上がると考えた」と「四つ葉」の狙いを説明する。
昨年12月のアンケートでは、児童の93%、保護者の97%が「学習意欲が高まった」と答えた。また、中学入学後、人数の多さになじめず不登校となる生徒がいなくなったなどの効果があったという。
4校の事務局を務める茂市小の袰岩千裕(ほろいわちひろ)校長は「音楽の合唱など一つのことを作り上げていく時に大人数でできる楽しみがあっていいと思う。算数では児童が30~40人いれば習熟度別クラスもできる。移動を伴うなどのデメリットもあるが、メリットの方がずっと大きい」と語る。
■小学校はギリギリまで残したい--東京学芸大・葉養正明教授
東京学芸大の葉養正明教授(教育政策論)に、これからの学校規模のあり方について聞いた。
学校の小規模化は地方の疲弊を象徴する大きな課題だ。人口集中による過疎化に少子化、さらに財政難のトリプルパンチで、郡部は小規模化の問題にあえいでいる。
教育面から見ると、小規模校には社会性の問題があるのは確かだ。子どもの数が少ないので、多くの人の前で自分の考えを表現できる力が弱かったり、競争意識が乏しかったりする。
ただ、義務教育段階の公立小中学校は、教育の場としてだけではなく、お祭りや運動会など地域の拠点にもなっており、地域の共有財産としての側面を持っている。学校がなくなることで集落やコミュニティーの崩壊につながる可能性がある。単に子どもが少なくなったからといって統廃合を進めては、地域社会を根こそぎ崩してしまう恐れがある。
そう考えると、教科担任の充実のため中学校は仕方ない面もあるが、小学校は相当規模が小さくなってもギリギリまで残したほうがいい。あまり小規模だと体育や音楽の授業が成り立つかという問題が出てくるが、宮古市のようにいくつかの小規模校をネットワーク化する試みは有効だ。残すか統合かという二つの選択肢しかない状況がかなり緩和する。
■適正規模大きく下回る小学校
学校の小規模化は年々進んでいる。06年度の文部科学省の学校基本調査によると、小学校の1校当たりの児童数は約314人。20年前の86年度は約427人、10年前の96年度は約331人だった。同省は小学校の適正規模を12~18学級(480~720人)としているが、大きく下回っている形だ。人口が集中する都市部では大規模化の現象もみられるが、多くの地域では小規模化への対策に頭を悩ませている。
福島県石川町は昨年度から、違う小学校に通う6年生が年20時間程度、進学する二つの中学校に集まって中学教諭から授業を受ける試みを始めた。対象は全教科。金曜日に行うことから「フライデー・コネクション」と銘打っている。
町には小学校が8校あるが、492人の学校からわずか20人の学校まで学校規模はさまざま。町教育委員会の水野岩雄調査研究員は「小学校で小集団の生活しかできないと中学校に進学しても仲間作りがうまくできないことなどがあった。入学前に顔を合わせることで早く慣れ、よりスムーズに中学校生活に移行できるのではと考えた」と説明する。 毎日新聞 2007年10月22日 東京朝刊
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児童数の減少で、では統廃合を、というパターンから抜け出す意味でなるほどなと思いました。「義務教育段階の公立小中学校は、教育の場としてだけではなく、お祭りや運動会など地域の拠点にもなっており、地域の共有財産としての側面を持っている。学校がなくなることで集落やコミュニティーの崩壊につながる可能性がある。」と大学の先生が言っているように、こうした認識が行政、特に文科省や教育委員会にあったら、各地のすさびれた廃校舎を見ることはなかったでしょう。行政は各省、係が連携して行うものです。「地域の核失いたくない」とタイトルにあるようにもう簡単に特に小学校の統廃合は見合わせてほしい、そんな気持ちです。
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コメント
初めまして。
「四つ葉の学校」を探している途中で、こちらにお邪魔してしまいました。
私の地元の小学校も、統廃合の危機にあり、存続の運動をしております。
これからも情報を参考にさせてください。
投稿: 田原っ子 | 2008年6月19日 (木) 20時54分